商法大改正
 今回の商法改正は、既存の知識を全部白紙に戻して一から勉強し直した方がよいと思うほどのまさに「大改正」です。改正点は、「改正の経緯」のとおりですが、以下には、皆さんに関係ありそうな点について要点のみ記します。
第1 商法の見直しの必要性
1. 企業間の国際的な競争の激化
2. コンピュータ・ネットワークの普及・IT革命の進展
3. 新規企業の資金調達の需要の増大企業活動の国際化
→会社を取り巻く社会・経済情勢の変化に対応する必要
 日本の商法は1899年(明治32年)制定の100歳超。随時、改正が行なわれてきたとはいえ、日本の企業は100年前の旧い骨格を残した制度の下で戦わなければならなかった
第2 商法の見直しの視点
1.企業統治の実効性の確保
 
(1)監査役制度の強化
@ 監査役の取締役会への出席・意見陳述の義務化
A 商法特例法上の大会社(資本の額が5億円以上または負債の合計が200億円以上)の社外監査役は、監査役の人数の半数以上、就任前に会社・子会社の取締役などでなかったものが要件に
B 監査役の任期は3年から4年に
C 監査役の辞任に関する意見陳述権等
(2)取締役の責任制限
   取締役の責任は、総株主の同意がなければ免除されない(商法2 66条5項)ところ、悪意や重過失以外の法令定款違反については責任の軽減が認められるようになった。
 代表取締役報酬の6年分、取締役報酬の4年分、社外取締役・監査役報酬の2年分を超える額について責任を軽減できる。
 
a)株主総会の特別決議による
b)定款の授権を受けた取締役会による
c)定款に定めた社外取締役と責任限定契約をする
2.高度情報化社会への対応
 
会社関係書類の電子化 株主総会の改善
@  定款、貸借対照表、株主名簿、株主総会・取締役会議事録等は電磁的記録にしておくことができるようになった。
A  計算書類は、官報や日刊紙による「公告」に代えて、自社のhpで公開してもよいことになった。
 但し、貸借対照表全文(大会社の場合は、加えて損益計算書全文)を、5年間継続して不特定多数へ提供することが必要。
B  株式買取請求、株主に対する通知、催告等について、インターネット等を利用した電磁的方法(メールによる送信、フロッピーディスクの交付)により行なうことができるようになった。
   → 株主総会招集通知、株主総会における電子投票による議決権行使が可能になった。(外国株主からの資金調達、株主総会参加に対応するため)
3.株式流動性の確保に向けた資金調達手段の改善
 
(1)金庫株の解禁(自己株式取得の自由化)
  金庫株=会社が所得し、(金庫に)保有している自己株式
  金庫株の解禁とは
@  自己株式取得の目的が問われなくなったこと(改正前は、消却、ストックオプション、強制的取得の場合などの限定)
A  保有の期間に制限なくなったこと(改正前は、ストックオプションでは最長10年、従業員持株会への譲渡目的で6か月など)
B  取得・保有の数量制限が撤廃されたこと(改正前は、ストックオプションと従業員持株会用合わせて発行済株式総数の1/10など)
資本市場の活性化・経営手法の多様化
(ストックオプションの活用・企業再編の場合の代用株としての利用)
(2)株式の発行価額規制の廃止
   改正前;額面株式の一株の金額(券面額)を5万円以上とし、額面株式・無額面株式の会社設立時の発行価額は5万円を下回ることはできなかった(資本の充実)。←しかし、会社がその株式の大きさをどの程度のもののするかは、資金調達の便宜、市場の状況、株主管理費用あんどを考慮して会社が自由に決めていいはず。
  →会社設立時の発行価額の規制撤廃
(3)額面株式制度の廃止
  改正前;「資本充実の原則」から、面株式の発行価額は券面額を下回ることはできず、会社の資本が券面額×発行済株式総数を下回ることはできないとされてきた→しかし、券面額は時価とは無関係であるのに関係があるあkのような誤解を招く。時価が券面額より下回る会社では資金調達困難
すべて無額面株式に
4.企業活動の国際化への対応
第3 改正の経緯
平成13年第1次(6月)改正
                  平成13年10月1日施行
  1.金庫株の解禁(自己株式取得の自由化)
2.株式の発行価額規制の廃止
3.額面株式制度の廃止

平成13年第2次(11月)改正
          平成11月28日公布 平成1 4年4月1日施行
  1.新株発行規制等の見直し
2.種類株式
3.株式の転換
4.新株予約権
5.新株予約権付社債
6.株式交換等の場合の新株予約権の処理
7.会社関係書類の電子化等
8.計算書類の公開
9.その他

平成13年第3次(12月)改正
          平成12月12日公布 平成14年 5月1日施行
  1.監査役の機能強化(任期3年→4年)
2.株主代表訴訟における取締役の責任軽減

平成14年改正
 平成14年5月22日参議院可決 平成1 5年4月1日施行予定
  1. 種類株主の取締役等の選解任権
2. 新株券失効制度の創設
3. 所在不明株主の株式売却制度等の創設
4. 端株等の買増制度
5. 株主提案権の行使期限の繰上げ等
6. 株主総会等の特別決議の定足数の緩和
7. 株主総会招集手続の簡素化等
8. 取締役の報酬規制
9. 重要財産等委員会(仮称)制度
10.大会社以外の株式会社における会計監査人による監査
11.委員会等設置会社(仮称)に関する特例
12.計算関係規定の省令委任
13.大会社についての連結計算書類の導入
14.現物出資、財産引受及び事後設立の目的たる財産の価格の証明
15.資本減少手続の合理化
16.外国会社
17.その他
<< 戻る